燃費向上を実現する「アトキンソンサイクル」とは？

燃費向上を実現する「アトキンソンサイクル」とは？

アトキンソンサイクルの仕組み

アトキンソンサイクルエンジンは、通常のガソリンエンジンである「オットーサイクル」エンジンと比較して、ピストンの動きを工夫することで熱効率を高めている点が最大の特徴です。

具体的には、吸気行程で取り入れた混合気を圧縮する前に一部排気してしまう、もしくは膨張行程を長くすることで、より多くのエネルギーを取り出す仕組みとなっています。

この工夫により、燃料の消費量を抑えながらも、十分なパワーを生み出すことが可能となります。

従来のエンジンとの違い

従来のガソリンエンジンで広く採用されているのは「オットーサイクル」という燃焼サイクルです。オットーサイクルとアトキンソンサイクルの最大の違いは、ピストンの動きと吸気バルブの開閉タイミングにあります。

オットーサイクルでは、ピストンが下降する際に吸気バルブが開き、混合気を吸い込みます。一方、アトキンソンサイクルでは、ピストンが下降した後もしばらくの間、吸気バルブを開き続けることで、吸い込んだ混合気の一部を排気側に戻すという動作を行います。

この動作により、アトキンソンサイクルでは実質的な圧縮比が低下し、膨張比が大きくなります。膨張比が大きいということは、燃焼エネルギーをより多く仕事に変換できることを意味し、結果として燃費の向上につながるのです。

アトキンソンサイクルのメリット・デメリット

– アトキンソンサイクルのメリット
アトキンソンサイクル最大の特徴は、なんといってもその燃費の良さにあります。従来のエンジンと比べて、燃料をより効率的に使うことができるため、燃費が大きく向上します。これは、膨張比を圧縮比よりも大きくすることで実現されます。具体的には、ピストンの下降行程を長くすることで、燃焼した混合気からより多くのエネルギーを取り出すことができます。

– アトキンソンサイクルのデメリット
燃費性能に優れるアトキンソンサイクルですが、デメリットも存在します。それは、低回転域でのパワー不足です。高回転時には効率的にパワーを発揮できますが、街乗りなどで多用する低回転域では、トルクが不足しがちになります。そのため、アトキンソンサイクルエンジンを搭載した車は、モーターアシストなどを併用することで、弱点を補っているケースが多く見られます。

ミラーサイクルとの関係性

アトキンソンサイクルと混同されやすい技術に、ミラーサイクルがあります。どちらも燃費効率の向上を目的とした技術ですが、その仕組みは異なります。

アトキンソンサイクルは、膨張比を圧縮比よりも大きくすることで、熱効率を高める技術です。一方、ミラーサイクルは、吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせることで、実質的な圧縮比を下げ、ポンピングロスを減らす技術です。

簡単に言えば、アトキンソンサイクルは同じ量の燃料からより多くのエネルギーを取り出す技術であり、ミラーサイクルは燃料消費を抑えながらエンジンの出力低下を防ぐ技術と言えるでしょう。

ミラーサイクルは、アトキンソンサイクルの欠点を補う技術として、しばしば併用されます。アトキンソンサイクルは低回転域でのトルクが不足しがちですが、ミラーサイクルと組み合わせることで、幅広い回転域で高効率と十分なトルクを両立することが可能になります。

アトキンソンサイクル搭載車の未来

アトキンソンサイクルは、従来のエンジンよりも燃費効率を高める技術として注目されています。では、この技術を搭載した車は、今後どのように発展していくのでしょうか。

まず、ハイブリッド車との組み合わせが挙げられます。アトキンソンサイクルは、出力の面でやや劣るという側面も持ち合わせています。しかし、ハイブリッドシステムと組み合わせることで、この弱点を補いながら、燃費性能を最大限に引き出すことが可能となります。

さらに、アトキンソンサイクルエンジンの技術革新も期待されます。現在、可変バルブタイミング機構などの技術により、従来の弱点を克服する取り組みが進んでいます。これらの技術革新は、アトキンソンサイクルのさらなる普及を後押しするでしょう。

環境規制の強化が世界的に進む中、燃費性能の高い車はますます需要が高まると予想されます。アトキンソンサイクルを搭載した車は、環境性能と経済性を両立させる未来の車として、重要な役割を担っていくと考えられます。