車の走行安定性を左右する「タービュランス」とは？

車の走行安定性を左右する「タービュランス」とは？

自動車におけるタービュランスとは？

自動車を運転していると、高速道路で大型トラックを追い越す時などに、車体が一瞬不安定になる感覚を経験したことはありませんか？ あれは、横風などの外的要因だけが原因ではなく、「タービュランス」と呼ばれる現象が大きく関係しているケースがあります。

タービュランスとは、日本語では「乱流」と訳され、空気や水などの流体が、規則正しい流れではなく、不規則に渦を巻いたり乱れたりする現象を指します。

航空業界では、飛行機の揺れを引き起こす原因として広く知られていますが、実は自動車業界においても、走行中の車体周辺の空気の流れ、すなわち「空気の流れ」は非常に重要な要素であり、このタービュランスが車の走行安定性や燃費効率にまで影響を与えているのです。

ディフューザーとタービュランスの関係

車の後方に装着されるディフューザー。一見、シンプルなパーツに見えますが、走行安定性や燃費向上に大きく貢献する重要な役割を担っています。その秘密は、まさに「タービュランス」との関係にあります。

ディフューザーは、車体底面を流れる空気をスムーズに後方へ導き、車体後部の気圧を下げることで、ダウンフォースを発生させる装置です。この時、ディフューザー後端で適切なタービュランス（乱流）を発生させることで、より多くの空気を車体後方へ排出することが可能となります。

タービュランスは、空気抵抗を増大させるという側面も持ち合わせていますが、ディフューザーの場合、適切に制御されたタービュランスが、より強力なダウンフォースを生み出すための鍵となります。ダウンフォースは、タイヤのグリップ力を高め、コーナリング時の安定性やブレーキング性能の向上に繋がるため、レーシングカーから市販車まで幅広く採用されています。

タービュランスが走行安定性に与える影響

車は走行中、常に空気抵抗を受けながら進んでいます。空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなるため、高速走行時は特に大きな影響を及ぼします。この時、車体周りで発生する空気の流れが乱れ、渦状になる現象を「タービュランス」と呼びます。

タービュランスが発生すると、車体には様々な方向の力が掛かり、走行安定性に影響を与えます。例えば、横風を受けた際に車体がふらつきやすくなったり、高速走行時の直進安定性が悪くなったりするのは、タービュランスの影響が大きいと言われています。

また、タービュランスは空気抵抗の増加にも繋がるため、燃費悪化の原因になることもあります。そのため、自動車メーカーは車体のデザインやエアスポイラーなどの空力デバイスを駆使して、タービュランスの発生を抑制し、走行安定性や燃費向上を図っています。

タービュランスを制御する技術

車の設計において、空気抵抗を減らし、より燃費の良い走りを目指すことは永遠のテーマです。しかし、空気抵抗を減らすだけでは、走行中の安定性までを確保することはできません。そこで重要になってくるのが、空気の流れの乱れである「タービュランス」をいかに制御するか、ということです。

タービュランスを制御するために、自動車メーカーは様々な技術を開発しています。例えば、車体の形状を工夫することで空気の流れをスムーズにする、小さな突起物（ボルテックスジェネレーター）を車体に設置することで意図的に小さな渦を発生させ、大きな乱流を抑える、といった方法があります。

これらの技術によって、走行中の車体周りの空気の流れが安定し、燃費向上、走行安定性向上、風切り音の低減などに貢献しています。日々進化を続ける自動車技術の中でも、タービュランス制御は、快適で安全な走りを支える重要な要素と言えるでしょう。

未来の自動車とタービュランス

電気自動車や自動運転車など、未来の自動車開発においても、タービュランス制御は重要な課題です。
電気自動車は、ガソリン車に比べてエネルギー効率を高めることが求められますが、そのためには空気抵抗の低減が不可欠です。
タービュランスを抑制することで、より空気抵抗の少ない車体デザインが可能になると期待されています。

また、自動運転車においては、安全性と快適性の向上が求められます。
タービュランスによる車両のふらつきは、自動運転システムの誤作動や乗員の乗り心地悪化につながる可能性があります。
高度なタービュランス制御技術は、自動運転車の安全性と快適性を両立させる上で重要な役割を担うと考えられています。