乗り心地と走りを両立？ド・ディオンアクスルとは

乗り心地と走りを両立？ド・ディオンアクスルとは

ド・ディオンアクスルの仕組み

ド・ディオンアクスルは、車軸の一種であるリジッドアクスルの仲間ですが、一般的なリジッドアクスルとは異なる構造を持っています。最大の特徴は、車軸ケーシングとデフケースが分離されている点です。
一般的なリジッドアクスルでは、車軸ケーシングとデフケースが一体化しているため、車輪が路面の凹凸を拾うと、その衝撃がデフケースを介して車体に伝わってしまいます。
一方、ド・ディオンアクスルでは、デフケースを車体側に固定し、車軸ケーシングのみを車輪と一緒に上下させる構造になっています。これにより、路面からの衝撃がデフケースに伝わるのを防ぎ、車体への振動を大幅に軽減することができます。
また、車軸ケーシングを軽量化できることもメリットです。バネ下重量が軽くなることで、路面追従性と乗り心地が向上します。

歴史：誕生から現代まで

ド・ディオンアクスルは、その名の通り、19世紀後半にフランスの自動車技術者であるド・ディオン伯爵によって発明されました。 当時は馬車の時代から自動車の時代へと移り変わる過渡期であり、乗り心地と走行性能を両立させるための技術が求められていました。 ド・ディオン伯爵は、車軸を車体から独立させることで、路面からの衝撃を緩和し、乗り心地を向上させることに成功しました。

20世紀に入ると、自動車の普及とともにド・ディオンアクスルも進化を遂げます。 特に、第二次世界大戦後には、自動車の高速化に伴い、サスペンションの重要性が増し、独立懸架方式の1つとしてド・ディオンアクスルは注目を集めました。 高級車やスポーツカーを中心に採用され、高い走行性能と快適な乗り心地を実現したのです。

しかし、1970年代以降は、より軽量でコンパクトなサスペンション方式が登場したこともあり、ド・ディオンアクスルは主流ではなくなりました。 それでも、その優れた性能から、現在でも一部の高級車やクロスカントリー車などに採用され続けています。

メリット：独立懸架に匹敵する乗り心地

ド・ディオンアクスルは、車軸懸架式の一種でありながら、独立懸架式に匹敵する快適な乗り心地を実現する点が大きな特徴です。 一般的な車軸懸架式では、左右の車輪が車軸によって固定されているため、片側の車輪が段差を乗り越えた際の衝撃が反対側の車輪にも伝わってしまう ことが、乗り心地の悪化につながっていました。

しかし、ド・ディオンアクスルでは、デフケースを車体側に固定し、車軸から切り離す という工夫が凝らされています。これにより、片側の車輪が受ける衝撃が反対側に伝わりにくくなり、結果として独立懸架式のように、路面の凹凸による振動を吸収し、フラットで快適な乗り心地 を実現できるのです。

デメリット：構造の複雑さとコスト

ド・ディオンアクスルの優れた点は数多くありますが、複雑な構造ゆえに、一般的なサスペンションと比べて部品点数が増加してしまうというデメリットも存在します。これは、製造コストの増加に直結するだけでなく、整備の難易度やコストにも影響を及ぼします。また、構造が複雑な分、重量が増加してしまう傾向もあり、燃費性能の面で不利になる可能性も考えられます。

採用例：アルファロメオ・アルフェッタの挑戦

高級車やスポーツカーで耳にすることの多い「ド・ディオンアクスル」。その独特な構造は、一般的な車軸とは異なり、車体への振動伝達を抑制しながらも、優れた操縦安定性を実現できる点が特徴です。

この画期的なサスペンションシステムは、19世紀後半にフランスの自動車技術者、アルベール・ド・ディオンによって発明されました。しかし、その複雑な構造ゆえに製造コストが高く、長らく一部の高級車やレーシングカーに採用されるにとどまっていました。

そんな中、イタリアの名門自動車メーカー、アルファロメオは、1972年に発売したアルフェッタに、いち早くド・ディオンアクスルを採用したのです。スポーティな走行性能と快適な乗り心地を両立させるという、アルファロメオの挑戦的な姿勢を示す象徴的な出来事でした。アルフェッタは、その卓越したハンドリングと快適性で高い評価を受け、ド・ディオンアクスルの可能性を広く世に知らしめることになりました。