渦流室式ディーゼルエンジン:仕組みと特徴
車を知りたい
先生、渦流室式ディーゼルエンジンって、普通のディーゼルエンジンと何が違うんですか?
自動車研究家
良い質問だね! 普通のディーゼルエンジンは一つの燃焼室で燃料を燃やすのに対して、渦流室式ディーゼルエンジンは燃焼室が二つに分かれているんだ。メインの燃焼室と、渦流室と呼ばれる小さな部屋があるんだよ。
車を知りたい
燃焼室が二つあると、何か良いことがあるんですか?
自動車研究家
そうなんだ。燃料を渦流室で燃焼させることで、空気と燃料がよりよく混ざり合うんだ。そのおかげで、燃焼が効率的になり、有害な排気ガスも減らすことができるんだよ。
渦流室式ディーゼルエンジンとは。
「渦流室式ディーゼルエンジン」は、自動車に使われるディーゼルエンジンの種類の一つです。特徴は、シリンダー内の燃焼室を二つに分けている点にあります。燃料は、小さい壺のような形の副燃焼室(副室)に噴射されます。この副室は、圧縮行程中に空気が入り込む際に渦を巻くように設計されていて、この渦流によって燃料と空気の混合を促進させています。そのため「渦流室式」と呼ばれ、副室は「渦流室」とも呼ばれます。燃料は副室で着火し、その後、主燃焼室の空気と混ざり合いながら燃焼していきます。
ディーゼルエンジンの基礎知識
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと異なり、空気の圧縮熱を利用して燃料を自然発火させる内燃機関です。ガソリンエンジンでは、スパークプラグを用いて混合気に点火しますが、ディーゼルエンジンではこの工程が不要です。
ディーゼルエンジンは、圧縮比が非常に高く、その結果として熱効率が高くなります。これが、ディーゼル車がガソリン車に比べて燃費が良い理由の一つです。
また、ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて低回転域で大きなトルクを発生させることができます。そのため、トラックやバスなどの大型車両や、力強い走りが求められる車種に多く採用されています。
渦流室式エンジンの構造
渦流室式ディーゼルエンジンは、その名の通り燃焼室とは別に渦流室と呼ばれる空間を設けているのが特徴です。燃料噴射装置からの燃料は、まずこの渦流室に噴射されます。 渦流室は、ピストン上部の燃焼室と小さな通路で繋がった構造となっています。
渦流室の形状は、燃料と空気を効率的に混合させるように設計されています。エンジン内に入ってきた空気は、圧縮行程でこの渦流室に押し込まれます。この際、渦流室の形状によって空気は強い渦を巻きながら流れ込みます。そこに燃料が噴射されることで、空気と燃料は均一に混合され、効率的な燃焼を実現します。
渦流の発生メカニズム
渦流室式ディーゼルエンジンにおいて、燃焼効率向上に大きく貢献するのが強力な渦流の発生です。この渦流は、どのようにして生み出されるのでしょうか。
まず、ピストンが上死点に近づくにつれて、吸気ポートから吸い込まれた空気は副室である渦流室へと導かれます。この際、吸気ポートは渦流室に対して接線方向に配置されているため、空気が渦を巻きながら流入します。
さらに、渦流室の形状も渦流発生に一役買っています。渦流室は球形や円筒形など滑らかな形状をしており、空気の流れをスムーズにすることで、渦の発生を促進します。
こうして生み出された強力な渦流は、燃料噴射の際に燃料と空気を効率的に混合し、燃焼効率の向上に貢献します。
メリット・デメリット
– メリット・デメリット
渦流室式ディーゼルエンジンは、その構造上の特徴から、いくつかのメリットとデメリットを併せ持ちます。
-■ メリット-
* 低い圧縮比でも燃焼しやすい 渦流室の形状により、燃料と空気が効率的に混合され、低い圧縮比でも燃焼が促進されます。これにより、エンジン構造を簡素化でき、製造コストを抑えられます。
* 始動性が良い 特に寒冷地での始動性に優れています。これは、渦流室内の高温の空気が、燃料の着火を助けるためです。
* 騒音や振動が少ない 燃焼が緩やかに進むため、直接噴射式ディーゼルエンジンに比べて、騒音や振動が抑えられます。
-■ デメリット-
* 熱効率が低い 燃焼室が複雑な形状をしているため、熱損失が大きくなり、熱効率が低下する傾向にあります。
* 出力や燃費性能が劣る 直接噴射式ディーゼルエンジンと比較して、出力や燃費性能が劣る場合があります。
* 排気ガス中のNOx排出量が多い 燃焼温度が高いため、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の排出量が多くなる傾向にあります。
これらのメリット・デメリットを踏まえ、渦流室式ディーゼルエンジンは、出力よりも、静粛性や始動性を重視する用途に適していると言えます。
近年の動向
かつてはディーゼルエンジンの主流を占めていた渦流室式ですが、近年ではその姿を見ることは少なくなりました。これは、排ガス規制の強化や電子制御技術の進歩により、よりクリーンで高出力な直接噴射式ディーゼルエンジンが主流となったためです。
しかし、渦流室式ディーゼルエンジンは、構造が単純で頑丈という利点があるため、現在でも一部の建設機械や農業機械など、耐久性や信頼性が重視される分野で使用され続けています。また、近年ではバイオディーゼル燃料への対応や、排ガス浄化技術の向上など、新たな技術開発も進められています。
このように、渦流室式ディーゼルエンジンは、その活躍の場を狭めながらも、特定の分野においては独自の進化を遂げながら生き残っていると言えるでしょう。