静寂のワイパー：フロートマウントとは？
車を知りたい
先生、「フロートマウントワイパー」って、普通のワイパーと何が違うんですか？
自動車研究家
良い質問だね！フロートマウントワイパーは、モーターや可動部分を一体化したフレームごとゴムでボディに取り付ける構造になっているんだ。例えるなら、普通のワイパーが板の上に直接モーターを置いているのに対し、フロートマウントワイパーはモーターごと箱に入れて、その箱をゴムで支えているイメージかな。
車を知りたい
なるほど。箱に入れることで、何か良いことがあるんですか？
自動車研究家
そうなんだ。フレーム全体をゴムで支えることで振動が伝わりにくくなるから、静かでスムーズな動きになるんだ。ただ、作るのにコストがかかるから、あまり普及していないんだよ。
フロートマウントワイパーとは。
「フロートマウントワイパー」とは、ワイパーを支えるフレームそのものをゴムを挟んで車体に固定する構造のことです。1984年にいすゞのピアッツァターボが対米輸出向けに採用し、その後1987年にはトヨタのクラウンにも搭載されました。アルミ鋳造製のフレームにモーターやリンク機構を内蔵することで、高い剛性と静粛性を実現しています。しかし、コスト高が課題となり、広く普及するには至っていません。
フロートマウントワイパー誕生の背景
自動車のワイパーは、雨天時の視界確保に欠かせない重要なパーツです。しかし、従来のワイパーは構造上、どうしても振動や騒音が発生しやすく、ドライバーにとって少なからずストレスとなっていました。特に高速走行時やワイパーの劣化に伴い、その騒音は顕著になりがちです。 こうした課題を解決すべく開発されたのが、フロートマウントワイパーです。従来のワイパーとは異なり、アームとブレードの間に特殊な機構を設けることで、ワイパーをガラス面に均一な圧力で密着させることに成功しました。これにより、振動や騒音を大幅に低減し、より快適な運転環境を実現しています。
構造と特徴：静音性と高性能を実現
フロートマウントは、自動車のワイパーシステムにおいて、ブレードとアームの接続方法を工夫することで、従来の方式よりも静粛性と払拭性能を向上させた画期的な技術です。
従来のワイパーシステムでは、アームとブレードが直接固定されているため、走行中の風圧や振動がワイパーに伝わりやすく、騒音やビビリが発生しやすいため、快適性を損なう要因となっていました。
一方、フロートマウントでは、アームとブレードの間に特殊な機構を設けることで、アームからの振動を吸収し、ブレードが常にガラス面に最適な圧力で密着するように設計されています。
これにより、走行中の風切り音や振動によるビビリ音を抑え、静粛性を大幅に向上させることができます。また、ブレード全体に均等な圧力がかかるため、払拭性能も向上し、雨天時の視界をよりクリアに確保することができます。
いすゞピアッツァターボ：対米輸出の切り札
1980年代、日本の自動車メーカーはこぞって北米市場に進出していました。中でも、いすゞはスポーティなクーペモデル「ピアッツァ」を、打倒トヨタ・セリカの切り札として投入します。このピアッツァ、スタイリングだけでなく、静粛性にもこだわった意欲作だったのです。その秘密が、ワイパーに採用された「フロートマウント」という技術でした。
トヨタクラウンへの採用とその後
トヨタの高級車ブランド、クラウンに採用されたことをきっかけに、フロートマウントワイパーは一気に注目を集めました。クラウンといえば、静粛性の高さも大きな魅力の一つ。従来のワイパーに比べ、格段に風切り音を低減できるフロートマウントワイパーは、クラウンの高級感と静寂性をさらに高める上で、まさにうってつけの技術だったと言えるでしょう。クラウンでの採用を皮切りに、フロートマウントワイパーは、現在では様々な車種に搭載されるようになっています。特に、高速走行時の静粛性が求められる高級車や、風切り音の影響を受けやすいハイトワゴンなどへの普及が進んでいます。
幻の技術？普及に至らなかった理由
フロートマウントは、ワイパーアームを車体に浮かせて固定することで、高い静粛性と払拭性能を実現する技術として、かつて注目を集めました。しかし、その複雑な構造ゆえに製造コストが高額となり、一部の高級車に採用されるにとどまりました。また、従来のワイパーシステムに比べて部品点数が増えるため、故障のリスクが高まることも普及を阻む要因となりました。さらに、近年では、ワイパーブレードの素材や形状の進化により、従来型のワイパーシステムでも静粛性や払拭性能が向上しており、フロートマウントの優位性が薄れてきたことも見逃せません。