幻の安全車「RSV」:その知られざる歴史
車を知りたい
先生、「研究安全車」ってどんな車のことですか?
自動車研究家
良い質問だね。「研究安全車」は、英語でResearch Safety Vehicle、略してRSVと呼ばれる車のことだよ。1973年からアメリカで始まった計画に基づいて作られたんだ。当時、自動車の事故が増えていたアメリカでは、安全性を高めるために、より安全な車を作るための研究が盛んに行われていたんだよ。
車を知りたい
安全性を高めるための車なんですね。具体的にどんな車だったんですか?
自動車研究家
簡単に言うと、当時の技術で実現可能な、あらゆる安全装備を備えた車だったんだよ。衝突時の衝撃を吸収するボディや、シートベルト、エアバッグなど、今私たちが乗っている車にも受け継がれている技術がたくさん詰まっているんだ。RSV計画は、その後の自動車の安全性を大きく向上させるきっかけになったんだよ。
研究安全車とは。
「研究安全車」とは、アメリカで1973年に開始されたRSV計画によって生まれた、高度な安全性能を持つ自動車のことです。この計画は、安全性が高く経済的で、輸送効率にも優れた自動車の量産を目指して、研究用に製作されました。アメリカでは、1966年のSafetyAct制定後、自動車の安全性を向上させる取り組みが進められてきました。合理的な安全規制の設定を目的として、1970年には実験安全車(ESV)計画が開始され、1974年には評価試験が終了しています。ESV計画の後継として計画されたRSV計画では、アメリカ以外のメーカーも参加し、研究車の製作と評価試験が1980年まで行われました。これらの流れは、現在の先進安全車(ASV)計画へと引き継がれています。
安全への目覚め:SafetyAct制定とESV計画
1960年代、アメリカは未曾有のモータリゼーションを迎え、クルマは人々の生活にとって欠かせないものとなりました。しかしその一方で、交通事故による死者数は深刻な社会問題となっていました。 1966年、アメリカ議会は自動車の安全基準を定めた「Safety Act(国家交通および自動車安全法)」を制定します。これは、自動車メーカーに対して衝突安全性をはじめとする、さまざまな安全基準への適合を義務付ける画期的な法律でした。
この法律制定を背景に、アメリカ高速道路安全局(NHTSA)は1970年、「Experimental Safety Vehicle(ESV)計画」を発表します。これは、当時の技術で実現可能な最高の安全性能を備えた自動車を開発する、という野心的な計画でした。この計画には、ゼネラルモーターズやフォードといったアメリカの自動車メーカーだけでなく、メルセデス・ベンツやボルボなどのヨーロッパのメーカーも参加し、安全技術の開発競争が繰り広げられました。
RSV計画:理想の安全車を追い求めて
1970年代、日本の自動車業界は、モータリゼーションの波に乗り、急速な発展を遂げていました。しかし、その一方で、交通事故による死者数は増加の一途を辿り、深刻な社会問題となっていました。そうした背景の中、自動車の安全性を飛躍的に向上させるという志のもと、ある壮大なプロジェクトが立ち上がりました。それが「RSV計画」です。
RSVとは「Research Safety Vehicle」の略称で、当時の最先端技術を結集し、理想的な安全性能を備えた実験車両を開発するという、極めて意欲的な計画でした。1973年から10年計画でスタートしたRSV計画には、国内の主要自動車メーカーや研究機関がこぞって参加。それぞれの英知を結集し、日夜研究開発に励んでいました。
日米欧が競った技術開発
1970年代、世界中で交通事故の増加が深刻な社会問題となっていました。各国政府は、事故を減らし、人々の安全を守るための革新的な技術開発に積極的に取り組み始めます。これが、「究極の安全車」を目指したRSV(Research Safety Vehicle)開発競争の始まりでした。アメリカではNHTSA(運輸省道路交通安全局)が主導し、ヨーロッパ各国も独自のプロジェクトを立ち上げました。そして、日本も、通商産業省(現 経済産業省)が音頭をとり、自動車メーカーや研究機関が一体となってRSV開発に参戦したのです。
RSVの成果と課題:ASV計画への橋渡し
RSVは、当時の最先端技術を惜しみなく投入し、数々の安全技術の礎を築きました。その成果は、エアバッグやABSなど、今では広く普及している安全装備に受け継がれています。衝突安全ボディの開発や、アクティブセーフティ技術の研究など、RSVは自動車の安全性を飛躍的に向上させる可能性を秘めていました。
しかし、RSVは市販車となることはありませんでした。その理由は、高度な技術の実用化には至らなかったこと、そして、当時の社会状況がRSVの普及を阻んだ側面があります。高度なセンサーや制御システムは、当時の技術ではコストや信頼性の面で課題を残しました。また、RSVが目指した高度な安全性能は、当時のドライバーの意識や交通環境にそぐわない側面もありました。
それでも、RSVの開発で得られた知見や技術は、その後の自動車開発に大きな影響を与えました。特に、1990年代に開始されたASV(先進安全自動車)計画は、RSVの理念を継承し、より現実的なアプローチで自動車の安全性を追求するものでした。RSVは、短命に終わったプロジェクトでしたが、自動車の安全技術の歴史において、重要なマイルストーンと言えるでしょう。
未来の安全へ:RSVが切り開いた道
RSVは、その革新的な安全技術の数々で注目を集めたものの、市販化には至らなかった幻の車として知られています。しかし、RSVが目指した安全性能の追求は、その後の自動車開発に大きな影響を与え、現代の安全技術の礎を築きました。
例えば、RSVに搭載されていたエアバッグやアンチロックブレーキシステム(ABS)は、現在では多くの車種で標準装備となっています。また、衝突時の衝撃を吸収するボディ構造や歩行者保護のためのデザインなど、RSVの先進的な安全技術は、その後の自動車安全基準の策定にも大きな影響を与えました。
RSVは、自動車の安全性を飛躍的に向上させる可能性を秘めた車でした。そして、その開発で得られた技術や知見は、現代の安全な車社会の実現に大きく貢献していると言えるでしょう。