ビスカスカップリングユニットの仕組みと特性
車を知りたい
先生、ビスカスカップリングユニットって、一体どんな仕組みなんですか?説明を読んでも、難しくてよく分かりません。
自動車研究家
なるほど。ビスカスカップリングユニットは、簡単に言うと、回転速度の違いを利用して動力を伝える装置なんだ。例えば、車が発進する時、前輪はエンジンからの力で回転を始めますが、後輪はまだ止まっているよね?ビスカスカップリングユニットは、この前輪と後輪の回転速度の違いを感じて、後輪にも動力を伝える役割をしてくれるんだ。
車を知りたい
へえー、そうなんですね!でも、どうやって回転速度の違いを感じて、動力を伝えるんですか?
自動車研究家
それはね、ビスカスカップリングユニットの中に、特殊なオイルが入っているからなんだ。このオイルは、回転速度の違いが大きくなると、粘り気が強くなる性質を持っている。だから、前輪と後輪の回転速度に差が出ると、オイルの粘り気が強くなって、後輪にも動力が伝わるようになるんだよ。
ビスカスカップリングユニットとは。
「ビスカスカップリングユニット」は、自動車に使われる用語で、シリコーンオイルの粘り気を利用して、速度に応じてトルクを伝えるクラッチのことです。密閉された容器の中に、ドライブプレートとドリブンプレートが交互に重ねられ、75~85%程度までシリコーンオイルが封入されています。残りの部分は空気です。この高粘度のオイルを引きずることでトルクが発生します。トルクは回転速度差の平方根に比例するような形で大きくなり、理想的な特性としては下向きに膨らんだカーブを描くべきですが、実際には上向きに膨らんだカーブを描きます。回転速度差が小さい、つまりスリップが少ない状態では高いトルクが得られるため、タイヤの空転感が少なくなります。しかし、スリップが大きくなるとトルクの上昇は緩やかになるため、急な坂道など負荷が大きい状況ではスリップしやすくなります。また、温度が上がると、ドライブプレートとドリブンプレートが完全に接触してロックしてしまう「ハンプ現象」が起こり、トルクが急激に大きくなる特性も持ち合わせています。
ビスカスカップリングユニットとは?
ビスカスカップリングユニットは、回転力を伝達するための装置の一つです。英語で「Viscous Coupling Unit」と表記し、略して「VCU」と呼ばれることもあります。自動車の駆動システムなど、回転速度の差を制御する必要がある場面で活躍しています。
シリコーンオイルの粘性を利用したトルク伝達
ビスカスカップリングユニットは、シリコーンオイルの粘性変化を利用して、2つの回転軸間でトルクを伝達する装置です。
ユニット内部は、複数の薄い円盤がわずかな隙間を空けて交互に重ねられた構造になっています。これらの円盤は、一方の軸と接続された入力側と、もう一方の軸と接続された出力側に分けられています。
通常の状態では、シリコーンオイルの粘性は低く、入力側と出力側の円盤はほぼ独立して回転できます。しかし、入力側と出力側の回転速度に差が生じると、シリコーンオイルにせん断力が発生し、粘度が上昇します。
この粘度の上昇により、入力側の回転が円盤を介して出力側に伝達され、トルクが発生します。回転速度の差が大きくなるほどシリコーンオイルの粘性も高くなるため、伝達されるトルクも大きくなります。
このように、ビスカスカップリングユニットは、回転速度の差に応じてトルク伝達量を自動的に変化させることができるため、様々な用途に利用されています。
回転速度差とトルクの関係
ビスカスカップリングユニットのトルク伝達量は、入力軸と出力軸の回転速度差に比例して変化します。つまり、回転速度差が大きくなるほど、伝達されるトルクも大きくなります。
これは、回転速度差が大きくなると、シリコーンオイルのせん断抵抗が大きくなるためです。
低速回転時や回転速度差が小さい場合は、伝達トルクは小さく、ほぼフリーな状態に近い状態になります。一方、高速回転時や急激な回転速度差が生じた場合は、伝達トルクが大きくなり、入力軸と出力軸の回転速度を同期させる方向に作用します。
ビスカスカップリングユニットの特徴と課題
ビスカスカップリングユニットは、そのシンプルな構造と比較的低コストであることから、多くの車両で採用されてきました。特に、前後輪の回転差を調整し、安定した走行を実現する上で効果を発揮します。また、特別な制御を必要としないため、システム全体の簡素化にも貢献しています。
しかし、ビスカスカップリングユニットには、反応速度の遅延という課題も存在します。これは、シリコンオイルの粘性変化を利用した動作原理によるもので、急な路面状況の変化などに対しては、最適な駆動力の伝達を行うまでに時間を要することがあります。このため、近年では、より高度な制御システムと組み合わせることで、反応速度の向上を図る取り組みが進められています。
自動車における応用例
ビスカスカップリングユニットは、そのシンプルな構造と高い信頼性から、自動車の様々な駆動システムに利用されています。代表的な例として、センターデフやLSD(リミテッドスリップデフ)などが挙げられます。
センターデフは、4輪駆動車において、前後車軸間のトルク配分を制御する装置です。ビスカスカップリングユニットを用いることで、通常走行時は前後輪に適切なトルク配分を行い、滑りやすい路面などでは自動的にトルク配分を変化させて走破性を向上させることができます。
LSDは、左右の駆動輪間のトルク配分を制御する装置です。ビスカスカップリングユニットを用いることで、コーナリング時などに内輪の空転を抑え、駆動力を効率的に路面に伝えることができます。これにより、車両の安定性やトラクション性能が向上します。
このように、ビスカスカップリングユニットは、自動車の駆動システムにおいて重要な役割を果たしており、安全性や走行性能の向上に貢献しています。