複式スラスト軸受け:仕組みと用途
車を知りたい
先生、「複式スラスト軸受け」ってなんですか?
自動車研究家
いい質問だね。「複式スラスト軸受け」は、軸にかかる上下方向の力、つまり「アキシャル荷重」を支えるための軸受けなんだ。二つのボールベアリングを組み合わせて、両方向からの力を支えることができるんだよ。
車を知りたい
二つのボールベアリングを使うんですか?普通の軸受けとは違うんですね。
自動車研究家
そうなんだ。それぞれ分離できる構造になっているんだけど、ラジアル荷重(軸を横に押す力)には弱くて、高速回転にも向いていないという特徴があるんだ。
複式スラスト軸受けとは。
「複式スラスト軸受け」とは、自動車に使われる部品で、2つのボールベアリングを一体化させたものです。ボールを転動体として使い、両側からかかる軸方向の力(アキシャル荷重)を支えます。構造としては、3つの座金の間に、ケージで支えられた2つのボールが重なっており、それぞれ分離できます。ただし、軸に対して垂直方向の力(ラジアル荷重)を受けることはできません。また、高速回転にも適していません。JIS規格では、内径22mm、23mm、24mmの3種類の標準品が定められています。
複式スラスト軸受けとは?
軸受とは、回転する軸を支え、滑らかに回転させるための機械要素です。その中でも、軸方向の力、すなわちスラスト荷重を受けるものをスラスト軸受けと呼びます。さらに、スラスト軸受けには構造上の違いから単式と複式に分類されます。複式スラスト軸受けは、軸の両側に軸受を配置し、反対方向から発生するスラスト荷重を効率的に支持するように設計されています。
構造と特徴
複式スラスト軸受けは、軸方向の荷重を効率的に支持するために設計された軸受けの一種です。その構造は、2つのスラスト軸受けを背中合わせに配置し、中央に軸受座を挟み込む形となっています。
この構造により、軸は両側から支持されるため、高荷重や衝撃荷重にも耐えることができます。また、軸の熱膨張による影響も軽減できます。複式スラスト軸受けは、高い負荷容量、安定性、および耐久性を備えているため、工作機械、建設機械、風力タービンなど、様々な産業用途で広く使用されています。
メリット・デメリット
複式スラスト軸受けは、単式に比べて多くのメリットを持っています。まず、軸方向の荷重を両側から支持することで、より大きな荷重に耐えることができます。また、軸の熱膨張による影響を受けにくいという点も挙げられます。さらに、単式と比べて軸の振れを抑制できるため、高回転、高精度の用途に適していると言えます。
一方、デメリットとしては、構造が複雑になるため、部品点数が増え、コストが高くなる点が挙げられます。また、組立調整が難しく、熟練した技術が必要となります。そのため、用途やコストを考慮して、単式と複式を使い分けることが重要です。
用途例
複式スラスト軸受けは、その高い負荷容量と軸方向の剛性から、様々な産業分野で広く利用されています。
例えば、工作機械の主軸や建設機械の旋回機構など、高荷重がかかる回転運動部でその真価を発揮します。 また、風力タービンや船舶の推進軸など、大型で高出力の回転機械にも不可欠な存在です。
さらに、精密な位置決めが求められる工作機械や振動の抑制が重要な回転機械など、用途に応じて様々な設計が施されています。
JIS規格と選定
複式スラスト軸受けを選定する際には、JIS B 1518「転がり軸受−スラスト軸受−寸法及び荷重定格」を参考にします。この規格では、複式スラスト軸受けの寸法、荷重定格、精度などが規定されています。
JIS規格に基づいて選定を行うことで、互換性を確保し、適切な性能を持つ軸受けを選ぶことができます。選定にあたっては、軸径、回転速度、荷重などの使用条件を考慮する必要があります。また、回転精度や許容回転数なども考慮する必要があります。
さらに、軸受けの使用環境も重要な要素です。高温環境や腐食性のある環境で使用する場合には、材質や潤滑方法にも注意が必要です。
最適な複式スラスト軸受けを選定するためには、これらの要素を総合的に判断することが重要です。メーカーのカタログや技術資料も参考にしながら、適切な選定を行いましょう。必要であれば、専門家に相談することも有効な手段です。