ニッケル水素電池:EV・HVを支える技術

ニッケル水素電池:EV・HVを支える技術

車を知りたい

先生、ニッケル水素電池の説明で『メモリー効果に留意が必要』とありますが、メモリー効果ってなんですか?

自動車研究家

良い質問ですね。メモリー効果とは、電池を満充電前に充電したり、放電しきる前に充電を繰り返すことで、電池がその容量を記憶してしまい、本来の性能を発揮できなくなる現象のことです。

車を知りたい

なるほど。つまり、中途半端な充電を繰り返すと、電池の容量が減ってしまうということですね?

自動車研究家

その通りです。ニッケル水素電池はメモリー効果を起こしやすい性質があるので、できるだけ満充電・完全放電を心がけることが重要です。ただし、最近のニッケル水素電池はメモリー効果が起こりにくく改良されているものも多いので、過度に心配する必要はありませんよ。

ニッケル水素電池とは。

『ニッケル水素電池』は、自動車に使われる高性能な電池です。プラス極にはニッケル酸化物、マイナス極には水素を吸ったり吐いたりできる特殊な金属(水素吸蔵合金)を使い、電気を蓄えます。

この電池は、従来の電池よりも多くのエネルギーを蓄えることができ、密閉化も比較的容易なため、環境規制の強化をきっかけに急速に普及しました。

しかし、充電時に熱が発生しやすく、適切な温度管理が必要となる点や、使い方によっては電池の性能が低下するメモリー効果といった課題も抱えています。

これらの課題を克服するために、電池の状態を監視・制御するシステム(電池マネジメントシステム)が開発されました。その結果、安全性と実用性を兼ね備えた先進的な電池として、電気自動車やハイブリッド車などに広く搭載されるようになりました。

ニッケル水素電池の仕組み

ニッケル水素電池の仕組み

ニッケル水素電池は、その名の通りニッケルと水素の化学反応を利用して電気を蓄え、放出する二次電池です。 正極には水酸化ニッケル、負極には水素吸蔵合金、電解液には水酸化カリウム水溶液が用いられています。

充電時には、正極のニッケルが酸化され、負極の水素吸蔵合金に水素イオンが吸蔵されます。そして、放電時には、正極でニッケルが還元され、負極で水素が放出され、電子が外部回路を流れます。 この一連の化学反応が繰り返されることで、充放電が可能となります。

ニッケル水素電池は、従来のニカド電池と比較して、エネルギー密度が高く、メモリー効果が少ないという利点があります。また、鉛蓄電池と比べて、軽量で環境負荷が低いことも特徴です。これらの利点から、ニッケル水素電池は、ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)などの車載用バッテリーとして広く普及しています。

高エネルギー密度とZEV規制

高エネルギー密度とZEV規制

電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の普及には、バッテリーの性能向上が欠かせません。中でも、ニッケル水素電池は、高いエネルギー密度を持つことから、初期のEVやHVに広く採用されました。エネルギー密度は、バッテリーの重量や体積あたりの容量を示す指標であり、エネルギー密度が高いほど、一度の充電でより長い距離を走行できることを意味します。

特に、米国カリフォルニア州で導入されたZEV(ゼロエミッション車)規制は、自動車メーカーに一定割合以上のZEVの販売を義務付けるものでした。この規制に対応するため、多くの自動車メーカーがニッケル水素電池を搭載したEVやHVを開発・販売しました。ニッケル水素電池は、高エネルギー密度によってZEV規制をクリアする上で大きく貢献したと言えます。

課題:発熱とメモリー効果

課題:発熱とメモリー効果

ニッケル水素電池は、高いエネルギー密度と長寿命を誇り、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)といった次世代モビリティのキーデバイスとして活躍しています。しかし、克服すべき課題も残されているのも事実です。
その一つが発熱の問題です。ニッケル水素電池は充放電時に熱を発生しやすく、特に急速充電時にはその傾向が顕著になります。過剰な発熱は電池の寿命や安全性を低下させる可能性があり、適切な熱対策が求められます。
また、メモリー効果も課題として挙げられます。これは、電池を満充電前に繰り返し充電することで、本来の容量よりも充電できる量が減ってしまう現象です。メモリー効果は、ユーザーの充電習慣に影響を受けるため、その発生メカニズムを解明し、対策を講じる必要があります。

電池マネジメントシステムによる克服

電池マネジメントシステムによる克服

ニッケル水素電池は、エネルギー密度が高く、長寿命という特性から、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の駆動用バッテリーとして広く採用されてきました。しかし、充放電サイクルの増加に伴い、個々の電池セルの特性にばらつきが生じやすいという課題も抱えています。この特性のばらつきは、電池全体の性能低下や寿命短縮に繋がる可能性があり、ニッケル水素電池の効率的な運用を阻害する要因となります。

この課題を克服するために開発されたのが、電池マネジメントシステム(BMS)です。BMSは、電池の電圧、電流、温度などをリアルタイムで監視し、各セルの状態を正確に把握することで、過充電や過放電を防ぎ、電池全体の性能を最適化します。さらに、個々のセルの特性のばらつきを検知し、充電電流を調整することで、ばらつきを抑制し、電池の長寿命化に貢献します。

このように、ニッケル水素電池はBMSとの組み合わせによって、その性能を最大限に発揮し、EV・HVの進化を支える重要な役割を果たしています。 BMSの技術革新は、ニッケル水素電池のさらなる可能性を引き出し、より高性能で安全なEV・HVの実現に貢献していくことが期待されています。

EV・HV用電池としての進化

EV・HV用電池としての進化

ニッケル水素電池は、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の初期の開発段階において、駆動用電池として重要な役割を果たしてきました。高いエネルギー密度と出力密度を両立し、コストパフォーマンスにも優れている点が、自動車メーカーから注目された理由です。

特に、トヨタの「プリウス」に代表される初期のHVの多くは、ニッケル水素電池を採用していました。これは、ニッケル水素電池が、当時の他の二次電池と比較して、出力密度が高く、HVのモーター駆動アシストに適していたためです。また、充放電サイクル寿命も比較的長く、実用的なレベルに達していたことも大きな利点でした。

その後の技術開発により、ニッケル水素電池は、EV・HV用電池としてさらに進化を遂げています。例えば、電極材料の改良や電解液の組成最適化などにより、エネルギー密度や出力密度が向上し、より長い航続距離と力強い加速を実現できるようになりました。また、低温特性や高温特性も改善され、幅広い温度環境下で安定した性能を発揮できるようになっています。

しかし、近年では、リチウムイオン電池の急速な進化と普及に伴い、EV・HV用電池としては、ニッケル水素電池は、徐々にそのシェアを減らしています。

それでも、ニッケル水素電池は、安全性やコストパフォーマンスの高さ、そして長年培ってきた信頼性など、独自のメリットを有しています。そのため、現在でも、一部のHVや、フォークリフトなどの産業用車両、鉄道車両など、特定の用途では、ニッケル水素電池が活躍しています。

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